こんにちは。行政書士の松本です。
本日は空家の解体工事の補助金についてのお話です。
全国的に空家が社会問題になって久しく、現在は多くの自治体で空家の解体工事に対して補助金が交付されています。
この補助金については、自治体により微妙に呼び名が異なり、申請手順や方法、求められる書類も変わってきます。
当事務所は長崎県南島原市の行政書士事務所ですので、主に南島原市の場合で書いていきます。
その旨ご了承の上、読んでいただければ幸いです。
空家解体補助金申請は申請内容や条件が変更になる場合も多いです。記事の内容は執筆後もできるだけ変更に合わせて内容を変えるようにしていますが、当記事の内容が古い可能性もありますのでご注意ください。
空家解体補助金とは?
総務省の資料によると、2023年時点の空家の数は全国で900万戸にのぼり、過去最多を更新しました。
全国各地で増え続ける空家は、防災や治安、景観の面で様々な課題をもたらしています。
自治体の取り組みとしても、空家バンクなど空家を有効活用するものから補助金を出して解体工事を促す取り組みなど、対策がなされています。
解体補助金については、簡単に言うと住めないほどボロボロになっていることというのが条件として付されることが多いです。
これも、住める空家は空家バンクで住民を募集して有効活用したいということなのでしょう。
冒頭でも書きましたが、空家解体補助金は自治体により名称が異なります。
南島原市の場合でいうと、「老朽危険空家除却支援事業補助金」となっており、ほかの例では諫早市の場合は「老朽危険空家等除却助成事業補助金」となっています。
諌早市の場合、空家「等」と、一文字多いですよね。
そのほか、一番大きい違いは補助金の上限金額です。
南島原市の場合は80万円ですが、ほかの自治会では50万円というところが多いです。
このように違いがありますので、申請書類や申請方法にも多少の違いが出てきます。
空家解体補助金はどういった空き家が対象か?
空家の解体補助金は、空家であればどんなものでも対象かというと、そうではありません。
どういった空き家が対象となるのかというと簡単な例としては「住まいとして使われていた建物で、現在利用されていない、老朽化が著しい建物」です。
具体的に見ていきましょう。
なお、南島原市の要綱を参考に書いていきますので、自治体による差異があることにご留意ください。
住まいとして使われていた建物
住まいとして使われていた建物というのは、補助金の要綱でいう「過半が居住の用に供されていた建築物」というところです。
どういうことかというと、わかりやすい例でいえば、店舗付きの住宅ってありますよね。
1階の通り沿いが店舗になっていて、奥側が店主の自宅になっているといった建物です。
そういった建物で、住むための部分より店舗であった部分の方が大きい場合は対象になりませんよということです。
利用されていない
利用されていないから空家なわけなので、当然と言えば当然なのですが「現に利用されていない」という文言はどこの自治体でも書いてありますね。
案外ありがちなのですが、今住んでいる家が古くなったので新しく家を建てて、引っ越し前にこの空家解体補助金を申請しようとされる方もいらっしゃいます。
意外と注意が必要な部分かもしれないですね。
老朽化が著しい建物
一番解説が必要な部分だと思います。
簡単に言えば、まだ使えそうな家にはこの補助金はほぼ申請が通りません。
では、老朽化が著しいとはなにを基準にしているのかというと、要綱にはこうあります。
「住宅地区改良法施行規則(昭和35年建設省令第10号)別表第1において、(い)欄に掲げる評定区分ニの構造の腐朽又は破損の程度における合計評点が100点以上であると測定される建築物」
ごちゃごちゃ書いてあるので、簡単に訳します。
「評定用の表があって、その点数で評価する」
ということです。
この表には、床にどういった破損が見られれば○○点、屋根にこういった変化が見られれば○○点という具合に家の不具合と点数が書いてあります。
役所の担当者さんが申請物件を見に来て、この表を基に点数をつけ、その評価が100点を超えれば補助金の対象となるということです。
とはいえ、100点超えるってどんな状態の家なのかわかりませんよね?
私の経験上の話にはなりますが、100点超える空家を見て「これは住めないなぁ…」と感じる程度ですね。
これならちょっと改修すれば住めるのに…という建物はほとんどの場合100点は超えないです。
ただ、一般的に見て大丈夫そうでも、この部分が傷んでたら危険という箇所もあり、そういった箇所の不具合はかなり高得点になるため自己判断で諦めるのは早計です。
ご自分の建物が対象になるのではないか?ということは行政書士や解体業者に相談してみるのも良いと思います。
その他の要件
このほかにも要件はあります。
市内にある建物であるだとか、構造が木造もしくは鉄骨造であるだとかですね。
諌早市の場合だと、所有権が移転している場合は取得から申請までに1年以上経過していることという条件もあります。
空家解体補助金の注意点
それでは、空家解体補助金を申請する上での注意点を書いていきます。
工事を始める前に申請を完了しておく
家屋の解体を始めた後で「うちの建物は解体補助金がもらえたのではないか?」と思われる方も多いです。
が、残念ながら着工した解体工事は空家解体補助金の対象外という自治体がほとんどです。
そのため解体工事に着手する前に解体工事補助金の申請をし、交付決定をしてもらわなければなりません。
補助金の申請、交付決定までにしてよいのは業者に見積をとるまでとなります。
交付が決定しても油断しない
交付が決定して、着工してしまえばあとは大丈夫というわけにはいきません。
ここまで書いてきたのは申請までなのですが、実際は工事が完了して補助金を交付してもらう必要がありますよね。
工事完了後には工事写真の提出が必要です。
具体的には、着工前、施工状況、完了、というような写真が必要で、これは解体工事をする業者に伝えておかなければいけません。
申請時に必要な書類に業者の印鑑を押す必要があるものがあるので、業者側も補助金対象工事であることは了解済みのはずですが、念のため写真が必要である旨は伝えておいた方が安心です。
工事が完了して提出しなければならない書類はほかに
- 完了証明書
- 領収書又は請求書の写し
などがあります。
まとめ
空家解体補助金について書いてきましたが、いかがでしたでしょうか。
空家である時点で、施工主様からすれば使わない建物であると思いますし、そういった建物にお金をかけたくはないと思います。
しかしながら、解体工事においては人件費や燃料費、処分代とコストがかなり上がってきているのが現状です。
補助金が交付されれば、その分ご自身の金銭的負担が軽くなりますので、ぜひ活用していただきたいと思います。
もしご不明点ありましたら、当事務所でもご相談を承ることができますのでメールにてお問合せください。
